新たな在留資格「特定技能」の不安要素

 

ディレクターの川口です。

 

在留資格「特定技能」の創設(4月1日施行)を間近に控え、

いわば「駆け込み」といえるタイミングで、

3月20日に法務省のホームページ上で、

「特定技能運用要領・様式等」、「申請手続」、

「在留資格『特定技能』に係るQ&A」

といった資料が公表されました。

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00127.html

 

3点で数百ページにもわたる資料が、法律の施行の

約10日前に公表される、というだけでも、

今回の法改正がいかにバタバタで駆け込みと

いえるか、誰しもが推察できるかと存じます。

 

業務上、当然ながら私共は全資料に目を通していますが、

まず真っ先に、受け入れる「雇用主側の負担が大きい」、

という印象を抱きました。

 

在留資格関連の業務に従事する私共の立場では当然、

全ての資料を一読して理解することは、大きな負担では

ありませんが、今回の法改正をきっかけとして、

外国人材の受入れに初めて興味を抱いた方々にとっては、

精読し、理解するだけでも相当の労力だと思いますし、実際に

自力で実行することは、相当高いハードルだと思います。

 

掘り下げるとキリがないと言えるほどの内容ですが、

運用要領の「別冊」から要点を抜粋するだけでも、まず

外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする公私の機関は、

ただでさえ煩雑な、在留資格関連の入国管理局への申請に加え、

「職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施」

が義務づけられ、具体的には以下のような支援が必須となります。

 

(1) 事前ガイダンスの提供(3時間程度が目安)

(2) 出入国する際の送迎(国内在住者を雇用する場合を除く)

(3) 適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援

(住居、銀行口座、携帯電話、電気・ガス・水道の契約など)

(4) 生活オリエンテーションの実施

(少なくとも8時間以上。金融機関、医療機関、交通機関、交通ルール、

生活マナー、災害情報、違法行為、社会保障、行政手続きなど)

(5) 日本語学習の機会の提供

(6) 相談又は苦情への対応

(7) 日本人との交流促進に係る支援

(8) 外国人の責めに帰すべき事由によらない契約解除の場合の転職支援

(9) 定期的な面談の実施(3か月に1回以上)、行政機関への通報

 

技能実習制度で発生した、幾多の問題を踏まえ、

外国人労働者を保護する観点から、必須とすべき

支援は当然含まれるものの、実際に受入側が全て

自力で行う場合は、相当の負担となると考えられます。

 

こういった支援は、特定技能の分野によっては

「登録支援機関」に委託できるものの、外部に

委託した場合の料金の発生を含め、日本人や在留資格

「技術・人文知識・国際業務」の該当者を採用する場合には

要さない、「プラスアルファの費用や負担」を考え、

人手不足という「ニーズがあるにもかかわらず、

二の足を踏んでしまう」ような事態が少なからず発生し、

制度自体の意味が薄れてしまわないか、懸念されます。

 

実際に、直近で私の御客様や提携先の企業様からは、

「制度の概要は理解し、いずれ検討する時期は

来るかもしれないけど、現段階では不確定要素も多いし、

しばらくは静観かな」、といったコメントを多く伺います。

 

例えば、「日本語学習の機会の提供」を一つとっても、

他国の制度が必ずしも優れているわけではないものの、

何百時間単位の語学学習の場を、国が主体となって

無償で提供しているような国もある中、あらゆる支援を

「雇用主任せ」(全て雇用主の負担・責任)にしてしまい、

日本社会の将来に大きく影響を及ぼす新制度が

しっかりと機能するか、不安要素は多々あるように思えます。

 

当然、完璧な法律や制度は存在せず、施行前の段階で

あればなおさら、施行後にはじめて浮き彫りとなる

課題を徐々に解決していくことは必然ではあるものの、

ドタバタの状況のまま法律が施行し、制度に伴う

試験が「急発進」されようとしている現状に、

一抹の不安を抱かずにはいられません。

 

今の私の心には、某メディアから発信された、

「日本人にとっては、良い(都合のいい)制度」

という外国人の方の言葉が、突き刺さっています。

 

法律はまもなく施行となりますが、今後の成り行きは勿論、

実際の外国人の方々からみた印象やコメントを含め、

引き続き注視していく所存です。

 

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