シンガポールの税務情報

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シンガポールの税務

個人所得税の確定申告について、まずはじめに検討する必要があるのが「居住者ステータス(Residency Status)」です。 通常、どの国でも個人所得税の申告にあたっては「居住者(Resident)」と「非居住者(Non-Resident)」に区分して税務上の取り扱いを決定します。

シンガポール居住者の税率
 個人所得税率

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課税所得額 税率 税額 実質税率
$0~$30,000 $20,000 0 0 0〜0.67%
$30,001~$40,000 $10,000 2 200 0〜0.67%
$0~$40,000 $30,000 200 0.67~1.38%
$40,001~$50,000 $10,000 3.5 350 0.67~1.38%
$0~$80,000 $40,000 550 1.38~4.19%
$80,001~$120,000 $40,000 7 2,800 1.38~4.19%
$0~$120,000 $80,000 3,350 4.19~6.63%
$120,001~$160,000 $40,000 11.5 4,600 4.19~6.63%
$0~$160,000 $120,000 7,950 6.63~8.72%
$160,001~$200,000 $40,000 15 6,000 6.63~8.72%
$0~$200,000 $160,000 13,950 8.72~10.58%
$200,001~$240,000 $40,000 18 7,200 8.72~10.58%
$0~$240,000 $200,000 21,150 10.58~11.98%
$240,001~$280,000 $40,000 19 7,600 10.58~11.98%
$0~$280,000 $240,000 28,750 11.98~13.05%
$280,001~$320,000 $40,000 19.5 7,800 11.98~13.05%
$0~$320,000 $280,000 36,550 13.05~13.92%
$320,001~$360,000 $40,000 20 80,000 13.05~13.92%
$0~$500,000 $320,000 44,550 13.92~16.83%
$500,001~$680,000 $180,000 22 39,500 13.92~16.83%
$0~$1,000,000 $500,000 84,150 13.92~19.92%
$$1,000,001~$1,500,000 $500,000 23 115,000 13.92~19.92%
$0~$1,000,001 $1,000,000 199,150 19.92~24%
$1,000,001以上 その以降 24 ~ 19.92~24%

例えば、月額給与12,000$のEPホルダーで仮に課税所得が144,000$とした場合、はじめの120,000$に対する7,950$と次の24,000$に対する15%を乗じた3,600$の合計11,550$が所得税額、ということになります。
(注)上記取り扱いは出稿時点のもので最新実務と異なる場合があります。

シンガポール非居住者の税率

シンガポールの非居住者には、所得の種類に応じて異なる税率が適用されます。
2022年の税制改正により、居住者の最高税率が22%から24%に引き上げられたことに伴い、非居住者の個人所得税率も従来の22%から24%に引き上げられました。

非居住者の場合、本人がシンガポール国内にいない状況も考慮され、支払者が税務当局に直接納税する源泉徴収が適用されます。

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所得 所得税率/源泉税率
給与所得 ・15% の一律税率
・居住者(Resident)の累進課税率
いずれか高いほうの税額
役員報酬 22% → 24%
専門家報酬 (コンサルタント、 コーチ等) ・総所得(gross income)の15%
・純所得(net income) の22% → 24%
いずれか高いほうの税額
芸能人としての所得 10%
その他所得(シンガポール不動 産の賃貸収入など) 22% → 24%
外国人向けの退職年金 (SRS) 22% → 24%
利子、ロイヤルティ 15%
ロイヤルティ 10%

法人税の基礎知識

法人税の基礎知識

シンガポールは属地主義を採用しており、国内で発生した所得のみを課税対象としています。

しかし、国外源泉所得がシンガポールに送金された場合は、一部の例外を除き課税されます。具体的には、以下のような国外で既に課税されている所得は、その国の最高法人税率が15%以上の場合に限り、非課税とされます。 配当金 国外支店からの利益 サービス収入

  • 1.配当金
  • 2.国外支店からの利益
  • 3.サービス収入

軽減税率/部分軽減税率

全ての法人に適用される軽減税率。通常の法人課税所得のうち最初の10,000シンガポールドルの75%および、次の190,000シンガポールドルの50%が免税となります。
従って、200,000シンガポールドル(日本円で約1,600万円程度)の課税所得の場合は実効税率が8.3%となります。

新規創業軽減税率

新規創業会社で、全株主が個人であり20名以下、かつ10%以上の株式を保有する株主が少なくとも1名いるなどの一定条件を満たす場合、設立から3年間、通常の課税所得の最初の100,000シンガポールドルの75%と次の100,000シンガポールドルの50%が免税となります。このため、200,000シンガポールドル(約1,600万円相当)の課税所得がある場合、実効税率は6.4%となります。
ただし、投資持株会社および不動産開発会社は、この制度の適用から除外されています。

その他の軽減税率等

その他、ここ数年間は年度によって毎年変更されますが、20%から50%の割合(但し、上限も10,000ドルから30,000ドル程度)で税額控除が認められています。

キャピタル・ゲイン非課税

シンガポールではキャピタル・ゲインに課税はありません。キャピタル・ゲインとは、株式や不動産の売却による利益のことです。しかし、キャピタル・ゲインを生む取引が頻繁に行われている場合、これらは事業所得と見なされ、課税の対象となる可能性があるため注意が必要です。また、キャピタル・ロス(売却損)やそれに関連する費用も資本性費用として損金には算入されません。

繰越欠損金

シンガポールの繰越欠損金は永久に繰越が可能です。
但し、株主同一要件があり、株主の過半数が変更になった場合は、その変更前の欠損金は利用できなくなります。

グループ合算税制

グループ会社間では、繰越欠損金や繰越されるCapital Allowance(減価償却費)の移転が可能です。
移転するためには、以下の要件を満たす必要があります

  • ・グループ内の会社間で75%以上の持分関係があること(直接または間接の保有、共通の会社による被所有を含む)
  • ・シンガポール法人であること
  • ・事業年度末が同一であること

従って、グループ関係を構築する場合は、繰越欠損金の同一株主要件と、グループ合算税制を考慮しつつ持分関係を決定しておくことが重要となります。

経費の損金算入

シンガポールに会計基準では、業務に関係した費用及び所得を得るために必要とされた費用は基本的にすべて損金として計上可能です。
日本の税制と比較した場合の主な留意点は以下の通りです。

  • ・乗用車に関連する費用は損金とならない。(タクシーなどの公共交通機関は可)
  • ・潜在的顧客への接待費用を含め交際費は全額損金可
  • ・利息費用については課税対象となる収益を生み出している投資等の資金についてのみ損金算入可
  • ・減価償却は損金不算入。(但し、別途Capital Allowanceという形式で所得控除できますが、建物については工場のみしか認められない等、全ての固定資産に対して償却の効果はありません。)

GSTの基礎知識

GSTの基礎知識

シンガポールでは、消費税に相当するGST(Goods and Services Tax)があり、標準税率は7%です。課税方式はインボイス方式で、これは日本の帳簿方式と異なります。そのため、課税事業者以外の会社は、請求額に7%のGSTを加算して請求することができません。
インボイスに関する要件も詳細に定められており、課税者番号の明示、”Tax Invoice”との明記、税率及び税額の区分表示などが必要です。
これらの要件を満たさないインボイスについては、GSTの控除が認められないため注意が必要です。また、契約上の債務者として自社が記載されていない請求書については、支払いを行っていたとしてもGSTの控除は認められません。
日本の税制と比較すると、これらの点に特に留意する必要があります。

非課税と免税

日本の消費税と同様、非課税取引と免税取引があります。
非課税取引はExempt Supplyと呼ばれ、基本的には金融サービスと居住用不動産の売買及び賃貸がその主なものです。免税取引はZero-rated Supplyと呼ばれ、0%のGSTが課税されているとの認識のもと、当該取引にかかる仕入税額控除が認められます。
また非課税取引にはRegulation 33で特別に定められている取引も含まれ、為替差損益、資本や債券の発行額、一定のヘッジ取引がこれに該当します。

課税事業者

シンガポールで消費税の課税事業者となる条件は次の2点です。いずれかに該当する場合、その時点で課税事業者として申請を行う必要があります。

  • 1.暦年において過去1年間の課税売上高が1百万シンガポールドルを超えた場合。
  • 2.今後12ヶ月の課税売上高が1百万シンガポールドルを超えると見込まれる場合

1の判断は暦年を基準に行い、2の判断は該当する事象が発生した時点で行います。課税事業者になる可能性のある会社は売上高の実績や契約状況に注意する必要があります。また、上記条件に該当しない会社でも、課税事業者としての選択申請を行うことは可能ですが、これは届出制ではなく、当局の許可が必要です。
シンガポールでの課税方式がインボイス方式であることを考慮すると、課税事業者として認められるまではTax Invoiceを発行することができません。そのため、届出が遅れるとGSTの請求漏れが発生し、会社に損失が生じることがあるため、届出のタイミングを正しく把握することが重要です。

申告

シンガポールでは、GSTの申告が四半期ごとに行われます。各四半期終了後の翌月末が提出期限となるため、課税事業者は四半期ごとに帳簿を整備し、請求書を集計する体制を整えておく必要があります。申告に際しては、以下の点に留意することが重要です。

  • 1.全ての請求書がTax Invoiceとしての要件を満たしているかどうか
  • 2.全ての請求書が申告する会社宛てに発行されているかどうか
  • 3.非課税売上が存在するか、及びこれが仕入税額の控除割合に影響を与えていないか
  • 4.申告のタイミングが請求日または支払日のいずれか早い日付に基づいているか

GSTの申告に関しては、当局からの問い合わせが多く、控除の要件に関して請求書の提出を求められることが一般的です。過剰な仕入税額控除の申告には罰金が科される可能性があるため、正確な申告を行うことが極めて重要です。

本情報は2023年11月現在の情報です。