エンジニアの米国派遣|B-1ビザ・ESTAでできること・できないこと

製造業、機械メーカー、設備メーカー等の企業から、

「米国へエンジニアを短期間派遣したいが、ESTAで問題ないでしょうか?」

「B-1ビザで機械の設置や修理はできますか?」

「米国の労働者に技術指導をする場合、就労ビザが必要ですか?」

といったご相談をいただく機会が非常に多くなっています。

これは、昨年9月に米国ジョージア州で行われた大規模摘発の影響が大きいと思われます。同州にある現代自動車のバッテリー工場建設現場で大規模な強制捜査が移民・税関捜査局(ICE)によって行われ、不法就労の疑いで475人が拘束されるという重大な事案が発生しました。

実際、多くの労働者が手錠、足枷されている写真はショッキングなものがありました。拘束されたのは、韓国籍の労働者が多かったのですが、協力会社を通じて派遣されていた日本人3人も含まれていました。

ほとんどがESTA渡米、あるいはミーティングへの参加と称して、B-1ビザを取得の上での渡米だったと報道されています。

結局、拘束されてしまった人たちは、移民収容施設(劣悪な環境だった模様です。)での留置を経て、米韓政府間の合意に基づき、韓国が用意したチャーター機で国外退去処分となりました。

米国内の顧客や関連会社に日本からエンジニアや技術者を短期間派遣しなければならないケースは少なくないと思われます。

これまでは何となく、ESTA渡米で問題ないであろうと考えていた企業でも、上記の大規模摘発、自社従業員の入国拒否、ESTA渡米での米国内でのトラブルといったことを踏まえて、きちんとしたビザを取得すべきという考えに変わってきているようです。

「短期間だからESTAでよい」

「米国企業から給与を受け取らなければ、B-1で就労が可能」

というわけではありません。

米国B-1ビザおよびESTAでは、商談、契約交渉、会議への出席など一定の商用活動が認められている一方、原則として米国内での就労・労働は認められていません。

ただし、一定の条件を満たす場合にはB-1ビザでありながら、米国内でエンジニアとしての活動ができる例外規定があります。

本記事では、ESTAや通常のB-1ビザで「できること」「できないこと」を整理した上で、エンジニアや技術者を米国へ派遣する際の例外について解説します。

1. B-1ビザ・ESTAでできること、できないこと

代表的な活動を整理すると以下のとおりです。

米国で行う活動 B-1・ESTAでの可否 主な注意点
米国企業との商談 ○ 原則可能 米国内での雇用・就労を伴わないこと
契約交渉・契約締結 ○ 原則可能 商用目的の一時的な活動であること
取引先・関連会社との会議 ○ 原則可能 通常業務そのものを行わないこと
展示会・学会・カンファレンスへの参加 ○ 原則可能 米国内で雇用されて働く活動にならないこと
市場調査・個人的な研究活動 ○ 原則可能 活動内容によって判断が異なる場合あり
米国企業の社員として通常業務を行う × 原則不可 適切な就労ビザが必要となる
米国の工場等で製造ラインの通常作業を行う × 原則不可 B-1は一般的な労働を認めるビザではない
米国企業から給与・報酬を受けて働く × 原則不可 実費相当の旅費や滞在費等とは区別が必要
米国外企業が販売した装置・機械の設置・保守・修理 △ 条件付きで可能 Commercial or Industrial Workersの要件に該当すれば可能
米国人労働者に機械の設置・保守等を指導する △ 条件付きで可能 契約内容や技術者の知識などを確認
米国人労働者に特殊技術・ノウハウを移転する △ 条件付きで可能 Specialized Trainerの要件に該当すれば可能
建築・建設作業そのものを行う × 原則不可 Commercial or Industrial Workersの例外からも除外される

※実際のビザカテゴリーや入国可否は、活動内容、契約関係、給与の支払元、渡航期間、申請者の職務内容などを総合的に確認する必要がありますので、IMSまで個別にご相談ください。

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2. B-1ビザとは?

B-1ビザは、米国へ一時的な商用目的で渡航するためのビザです。

米国国務省は、B-1で認められる代表的な活動として、次のようなものを挙げています。

重要なのは、B-1は「Business」のためのビザではありますが、決して米国内で自由に「Work」ができるビザではないという点です。

この点を勘違いしたままB-1ビザの申請を行ったところ、却下になってしまった、あるいはB-1ビザを所持していたのに入国拒否になったというご相談を多くいただいております。

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3. ESTAでは仕事ができなくても、B-1ビザなら仕事ができる?

ESTAとはVisa Waiver Program(ビザ免除プログラム)を利用して米国へ渡航するための事前の電子渡航認証制度です。日本国籍の場合には短期間の出張であれば、ESTAが利用できる場合がほとんどです。

米国国務省は、ESTAによる渡航についても、原則としてB-1で想定される商用活動と同じ範囲の活動を行うことができると説明しています。

「ESTAでは不可でもB-1ビザなら仕事ができる」

「B-1を取得すれば、ESTAより広い範囲で活動ができる」

という理解は適切ではありません。

重要なのは、ESTAでもB-1ビザでもできる活動の範囲に相違はないということです。

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4. エンジニア向けB-1ビザ|Commercial or Industrial Workers

通常B-1では、米国内での労働は認められません。しかしながら、エンジニアについては、一定の条件を満たす場合に、Commercial or Industrial WorkersとしてB-1に該当し、米国内での労働が可能になる場合があります。

この場合には、発給されたビザ面のAnnotation(備考)欄に、その旨明記されますので、入国審査でトラブルになることはほとんどありません。

代表的には、米国外の企業で製造され、米国企業へ販売された商業用・産業用設備や機械について、設置、保守、修理等を行うため、エンジニアを米国へ派遣するケースです。

Commercial or Industrial Workersの主な条件

  1. 米国外の企業から米国側へ商業用または産業用設備・機械等が販売されていること
  2. 売買契約書に、売主が設置、保守、修理またはトレーニング等を提供することが明記されていること
  3. 派遣される技術者が、その契約上の義務を履行するために必要な独自・専門的知識を有していること
  4. 米国源泉の給与・報酬を受けないこと
  5. 建築・建設作業そのものを行うものではないこと

この中でも、実務上非常に重要になるのが上記2の売買契約書の内容です。

単に、「当社の機械だから、日本からエンジニアを送ります」では足りず、

契約上、売主側に設置・保守・修理等を行う義務があるか、エンジニア派遣について明記されているかを確認する必要があります。

ケース1:日本メーカーが製造・販売した機械の設置(インストール)

日本の機械メーカーA社が、米国企業B社に産業機械を販売。

売買契約書には、A社が設置および初期調整を行うことが定められており、そのために機械について専門知識を有するA社のエンジニアを米国へ短期間派遣する。

→ Commercial or Industrial WorkersとしてB-1に該当する可能性があります。

ただし、契約内容、実際の作業内容、報酬の支払元、エンジニアのバックグラウンドなどの確認が必要です。

ケース2:米国子会社の人手不足を補うため日本から社員を派遣

米国子会社の工場が人手不足のため、日本本社から技術者を2か月派遣し、米国企業の従業員と同じ製造業務を担当させる。

→ B-1では認められない可能性が高いです。

形式上は「出張」であっても、実際の活動が米国内における通常の労働・就労であれば、適切な就労ビザを検討する必要があります。

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5. Specialized Trainersとは?

エンジニア派遣に関連して、もう一つ非常に重要なものとして、Specialized Trainersがあります。

こちらは2025年12月に新たに追加されたカテゴリーです。同年9月のジョージア州での大規模摘発を受けて、新設された規定と思われます。

このSpecialized Trainersは、一時的に渡米し、米国の労働者に対して、専門的・独自の技術、技能、ノウハウ等を教える、または知識移転を行うようなケースが想定されております。

発給されたビザ面のAnnotation(備考)欄に、“B-1 SPECIALIZED TRAINER”と明記されます。

Specialized Trainerの主な条件

  1. 米国への渡航が一時的であること
  2. 米国の労働者にトレーニングまたは知識移転を行うこと
  3. トレーニング内容は、専門的または独自の技術・技能・ノウハウ等であること
  4. 産業用設備、機械または工程に必要な技術等であること
  5. 対象となる設備・機械・工程が米国外の企業から取得または調達されたものであること
  6. 申請者が米国内では一般的に入手できない固有の知識を有していること
  7. 米国源泉の給与・報酬を受けないこと

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6. Commercial or Industrial WorkersとSpecialized Trainersの違い

両者は似ていますが、ポイントが異なります。

比較項目 Commercial or Industrial Workers Specialized Trainers
主な目的 機械・設備の設置、保守、修理等 米国の労働者への専門技術・知識の移転
現場での作業 売買契約書にエンジニア派遣について、明記されている等の条件を満たす場合、一定の作業が可能 原則としてトレーニング・知識移転が中心
対象 米国外から取得した商業用・産業用設備、機械等 米国外から取得した設備、機械、工程に関する専門的技術等
申請者に求められる知識・経験 契約上のサービス遂行に不可欠な知識・経験 米国内で広く入手できない固有知識・経験
米国源泉の報酬 不可 不可
ビザのAnnotation B-1 COMMERCIAL PER 9 FAM 402.2-5(E)(1) “B-1 SPECIALIZED TRAINER”

Commercial or Industrial Workersの要件に該当しないケースでも、Specialized Trainersというカテゴリーでエンジニアの派遣が可能な場合もあります。

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7. エンジニアの米国派遣で重要なのは、実際の渡航目的と活動内容

エンジニアの米国派遣の際に、最も危険なのは肩書や職種だけで判断してしまうことです。

「エンジニアなのでB-1で大丈夫」

とは限りません。

反対に、

「米国の工場で機械を触るので必ず就労ビザが必要」

とも限りません。

重要なのは、実際の渡航目的と活動内容です。

IMSでは、エンジニア派遣のご相談を受ける際、例えば次のような点を確認します。

こうした事情を総合的に確認した上で、B-1が適切なのか、あるいはEビザやLビザ等の他の就労ビザカテゴリーを検討すべきなのかを判断することが重要です。

米国へのエンジニア派遣について判断に迷われている企業様へ

IMSでは、売買契約書、具体的な作業内容、派遣期間、給与の支払元、エンジニアの専門性等を確認した上で、適切なビザカテゴリーを検討しています。

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8. ESTAではなくB-1ビザを検討した方がよいケース

ESTAとB-1では、許容される商用活動の基本的な考え方は共通しています。

しかし、だからといって、

「ESTAで入国できるのであれば、わざわざB-1を取得する意味はない」

とは限りません。

特に、

といったケースでは、渡航前に活動内容を十分に精査し、必要に応じて適切なビザの取得を検討することを推奨しております。

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9. B-1ビザを取得すれば米国への入国は保証される?

いいえ、ビザは入国を保証するものではありません。これは非常に重要なポイントです。

有効なB-1ビザを取得していても、米国への入国が自動的に保証されるわけではありません。

実際の入国時には、CBP(U.S. Customs and Border Protection:米国税関・国境警備局)による入国審査が行われ、最終的な入国可否や滞在条件が判断されます。

したがって、ビザ申請時だけではなく、入国時にも、

などについて、一貫した説明ができるよう準備しておくことが重要です。

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10. よくあるご質問

Q1. ESTAで商談や会議への出席はできますか?

一般的な商談、契約交渉、ビジネス関係者との会議、カンファレンス等への参加は、通常、B-1で認められる商用活動の範囲に含まれ、ESTAでも同様の活動が可能です。

Q2. 日本から給与をもらっていれば、米国で作業してもB-1で大丈夫ですか?

必ずしもそうではありません。

給与の支払元は重要な判断要素の一つですが、ポイントはそれだけではありません。米国内で通常の労働・就労に該当するような活動を行う場合、日本から給与を受け取っているという理由だけでB-1が認められるわけではありません。

Q3. 日本で製造した機械を米国で設置することはできますか?

一定の条件を満たせば、Commercial or Industrial WorkersとしてB-1に該当する可能性があります。

特に、売買契約書の内容を確認する必要があります。

Q4. 米国人スタッフに日本独自の製造技術を教えることはできますか?

一定の条件を満たす場合、Specialized TrainersとしてB-1ビザに該当する可能性があります。

ただし、単なる一般研修ではなく、米国内で広く入手できない専門的・固有の知識や技術であることなど、複数の要件があります。

Q5. B-1ビザとESTAのどちらを選べばいいですか?

渡航期間だけでなく、実際の活動内容や渡航頻度、作業場所、契約内容等によって判断する必要があります。

特にエンジニア派遣や技術指導の場合は、「短期だからESTA」という判断をする前に、様々なポイントを確認の上、総合的に判断する必要があります。

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11. エンジニアを米国へ派遣する企業の皆様へ

米国へのエンジニア派遣では、

「会議なのか」

「技術指導なのか」

「設置作業なのか」

「修理なのか」

「米国企業の通常業務を行うのか」

によって、対応方法が大きく変わります。

さらに、同じ「機械の設置」という表現であっても、契約書、作業内容、派遣社員の専門性などによって結論が異なる場合があります。

そのため、渡航直前になってから判断するのではなく、十分な時間的余裕をもって、契約書や具体的な作業内容を確認することが重要です。

行政書士法人IMSでは、エンジニア・技術者の米国派遣に関するビザ申請を多数サポートしております。

このようなご相談に対応しています

「この作業はB-1で可能なのか」

「ESTAで渡航させても問題ないのか」

「Commercial or Industrial WorkersとSpecialized Trainersのどちらが適切か」

「EビザやLビザなど、別のカテゴリーを検討すべきなのか」

「米国で行う活動内容をどのようにビザ申請で説明すればよいか」

など、ご不明な点がございましたら、ぜひ行政書士法人IMSまでご相談ください。

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※ビザの発給可否は米国大使館・領事館が審査し、最終的な米国への入国可否は米国税関・国境警備局(CBP)が判断します。

最終更新:2026年9月

参考資料

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