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日本企業が米国企業を買収した後、日本人社員を派遣できる?M&A後の統合作業とB-1 in lieu of H-1B申請事例

日本企業による米国企業・米国事業の買収が完了した後、実際の統合作業を進めるために、日本本社から社員をアメリカへ派遣したい――。

このようなケースで問題になるのが、「どのビザで日本人社員を派遣するのか」という点です。

買収後には、親会社への報告体制の構築、予算管理、ブランド統合、現地スタッフとの調整、ガバナンス強化、改装・設備投資など、日本本社側の担当者が現地で対応したい業務が数多く発生します。

しかし、アメリカで行う活動が単なる会議や視察を超える場合、「出張だからESTAで大丈夫」「日本から給与が出るからB-1で問題ない」とは限りません。

今回は、行政書士法人IMSが実際に取り扱った、日本企業による米国事業買収後の統合作業のため、日本本社の管理職を約3か月米国へ派遣するB-1 in lieu of H-1B申請をもとに解説します。

※本記事の事例について
本記事は行政書士法人IMSが実際に取り扱った米国ビザ申請案件をもとにしています。お客様および関係企業のプライバシー・機密情報保護のため、企業名、氏名、買収時期、勤務地その他の情報を一部変更・一般化しています。

米国企業を買収した後、日本人社員を派遣する場合のビザは?

結論からいうと、「米国企業を買収した」という事実だけで、使用するビザが決まるわけではありません。

重要なのは、派遣される社員がアメリカで実際に何をするのかです。

たとえば、次のような点を確認する必要があります。

  • 米国で具体的にどのような業務を行うのか
  • 単なる会議・交渉・視察なのか
  • 買収後の統合作業やプロジェクトに実際に関与するのか
  • 派遣期間はどの程度か
  • 給与は日本法人と米国法人のどちらから支払われるのか
  • 日本法人と買収先米国法人との資本関係はどうなっているのか
  • 本人は管理職なのか、専門的な知識・経験を持つ社員なのか
  • 一時的な出張なのか、米国法人への長期的な駐在・転勤なのか

これらによって、B-1、B-1 in lieu of H-1B、L-1、E-2など、検討すべきビザカテゴリーが変わる可能性があります。

「M&A後の統合作業(PMI)」とは?

企業買収は、契約が成立した時点ですべてが終わるわけではありません。

買収後には、買収した企業・事業を親会社の経営方針や管理体制に統合していく作業が必要になります。

一般に、このような買収後の統合作業はPMI(Post Merger Integration)と呼ばれます。

具体的には、次のような業務が考えられます。

  • 経営・管理体制の確認
  • 親会社へのレポーティング体制の構築
  • 予算策定・事業計画の確認
  • ブランド基準の統一
  • 現地経営陣・従業員との調整
  • 会計・監査・ガバナンス体制の整備
  • 設備投資計画の策定
  • 店舗・施設の改装プロジェクト
  • 親会社の経営方針やノウハウの導入

日本企業が米国企業を買収した場合、日本本社でその企業や事業について熟知している社員を現地へ派遣する必要が生じることがあります。

ここで、米国ビザの検討が必要になります。

IMS実例|米国事業買収後の統合作業のため日本人管理職を派遣

行政書士法人IMSが実際にサポートした案件をご紹介します。

日本企業 日本を本社とするサービス企業
米国側 日本企業の米国子会社を通じて米国事業を買収
申請者 日本本社の管理職
予定滞在期間 約3か月
主な目的 買収後の運営フォロー・統合作業
給与 日本法人から支給
米国からの給与・報酬 なし
IMSで検討・申請したビザ B-1 in lieu of H-1B

米国で予定されていた業務

この案件では、日本企業の米国子会社を通じて米国の事業を買収した後、日本本社の管理職を約3か月間派遣する計画でした。

申請者が担当する予定だったのは、単なる視察ではありません。

IMSでは、実際の業務内容を確認し、次のような活動を整理しました。

  • 買収後の事業運営のフォローアップ
  • 今後の予算・事業戦略の策定
  • 親会社を代表して予算会議へ参加
  • 米国事業の管理状況の確認
  • 親会社への報告体制の整理
  • 買収後の事業計画の進捗確認
  • ブランド基準に合わせた改装計画の管理
  • 現地企業、施工会社、日本側デザイナー等との調整
  • 将来の設備投資に向けた現地確認と資料作成
  • 監査対応を含む親会社側のガバナンス強化

つまり、日本の親会社側の担当者として、買収後の事業統合を現地で管理・調整するという役割でした。

なぜ通常のB-1だけではなく「B-1 in lieu of H-1B」を検討したのか

一般的なB-1ビザでは、商談、契約交渉、取引先との協議、会議・カンファレンスへの参加など、米国内で雇用されることを伴わない一定の商用活動が認められています。

一方、米国務省は、B-1ビザについて米国内での skilled or unskilled labor(熟練・非熟練労働)のためのビザではないことも明確にしています。

そのため、


「日本企業の社員である」
「給与は日本から支給される」
「期間は3か月だけ」

という理由だけで、すべての活動が通常のB-1で認められるわけではありません。

今回のIMS案件では、申請者が買収後の統合作業に実際に関与する予定であり、通常の会議・視察だけでは説明しきれない活動が含まれていました。

そこで、申請者の職歴、専門性、米国で予定される業務、日本法人との雇用関係、給与の支払元などを確認し、B-1 in lieu of H-1Bとして申請を組み立てました。

B-1 in lieu of H-1Bとは?

B-1 in lieu of H-1Bは、米国務省のForeign Affairs Manual(9 FAM 402.2-5(F))に規定されている取り扱いです。

一定の条件下では、本来H-1に分類され得る専門的な業務を一時的に行う場合に、B-1として取り扱われるケースがあります。

特に重要になるのが、雇用関係と給与の支払元です。

米国務省の規定では、B-1 in lieu of Hとして扱う場合、米国での活動について米国側から給与を受けるのではなく、国外の企業との雇用関係および国外からの給与支払いが継続していることが重要な要素となっています。

また、この取り扱いに基づいて発給されるB-1ビザには、

B-1 IN LIEU OF H, PER 9 FAM 402.2-5(F)

というAnnotation(注記)が付されることになっています。

米国務省 9 FAM 402.2(公式)

今回のIMS案件で重要だった「日本から給与を受け続ける」という点

今回の申請者は、米国滞在中も日本法人の従業員という立場を維持する計画でした。

米国法人へ転籍するのではなく、

  • 日本法人との雇用関係を継続
  • 給与は日本法人から支給
  • 米国企業・米国法人から給与や報酬を受けない
  • 出張費用も日本法人が負担
  • 約3か月の業務終了後は日本へ帰国し、日本での勤務を継続

という構成です。

IMSでは、この点についてもサポートレターの中で明確に説明しました。

ただし、「給与が日本から出ていればB-1 in lieu of H-1Bになる」という意味ではありません。

給与の支払元は重要な要素ですが、実際には本人の資格・専門性、米国で行う具体的な業務、派遣期間、雇用関係などを含めて判断する必要があります。

買収後の社員派遣ならL-1ビザではないの?

ここで企業の人事担当者からよく出てくるのが、

「日本企業が米国企業を買収したのであれば、L-1ビザではないのですか?」

という疑問です。

L-1は、日本企業と米国企業の間に一定の親会社・子会社・支店・関連会社などの関係があり、要件を満たす社員を米国側へ企業内転勤させる場合に検討される代表的なビザです。

たとえば、L-1では一般に、申請者が一定期間、海外の関連企業で勤務していたことに加え、米国で管理職・役員として勤務するのか、または専門知識を持つ社員として勤務するのかなどが重要になります。

したがって、M&Aによって日本企業と米国企業の間に一定の資本・支配関係が成立した場合には、L-1が選択肢になるケースもあります。

一方で、今回のIMS案件は、米国法人へ長期的に転勤して勤務するという計画ではなく、日本法人に在籍したまま、買収直後の一定期間だけ統合作業を行うというものでした。

このように、同じ「買収後の社員派遣」であっても、派遣の目的・期間・職務内容によって検討すべきビザは異なります。

USCIS:L-1A Intracompany Transferee

E-2ビザが選択肢になる場合も

日本は米国とのEビザ条約国です。

そのため、日本企業による米国への投資・買収の内容や米国企業の所有関係などによっては、E-2 Treaty Investorの枠組みを検討できるケースもあります。

E-2では、投資家本人だけでなく、一定の要件を満たす企業の役員・管理職・監督職、または企業運営に不可欠な専門技能を持つ従業員が対象となる場合があります。

したがって、買収後に日本人社員を継続的に米国事業へ配置する計画であれば、BビザだけではなくE-2やL-1を含めた検討が必要になることがあります。

米国務省:Treaty Trader / Treaty Investor Visa

ESTAで買収後の統合作業をしてもよい?

ここも非常に重要です。

ESTAは「ビザの簡易版」ではありません。

Visa Waiver Program(VWP)を利用した商用渡航で認められる活動は、基本的にB-1で想定される一定の商用活動と対応しています。

そのため、B-1では認められない就労・業務が、ESTAなら認められるということではありません。

たとえば、

  • 米国企業との会議
  • 契約交渉
  • 取引先との協議
  • 一定の商談

などと、

  • 米国事業の日常業務を担当する
  • 米国法人の従業員として働く
  • 現地スタッフに代わって実務を継続的に行う
  • 米国側から給与を受けて就労する

ことは同じではありません。

特にM&A後のPMIでは、「会議のための出張」と「実際の統合作業」の境界が分かりにくくなることがあります。

「90日以内だからESTA」ではなく、まず米国で何をするのかを確認することが重要です。

M&A後の米国派遣で検討される主なビザ

カテゴリー 想定される場面 主な確認ポイント
ESTA / 通常のB-1 会議、商談、契約交渉、協議など 米国内での雇用・就労に当たらないか
B-1 in lieu of H-1B 一定の要件のもと、専門的な業務を一時的に行うケース 本人の資格・専門性、具体的業務、国外雇用・国外給与など
L-1A / L-1B 関連会社間の企業内転勤 企業間関係、海外勤務歴、管理職・役員または専門知識など
E-2 日本企業による米国投資・事業運営 投資、企業の国籍・所有関係、職位・専門性など

どれが適切かは、企業名や役職だけでは判断できません。

「誰を」「何のために」「何日間」「どの会社の立場で」「どのような業務をさせるのか」を具体的に確認する必要があります。

IMSでは「役職名」ではなく、米国で実際に行う業務を確認します

企業の海外人事担当者からご相談をいただく際、申請者の役職が「部長」「マネージャー」「エンジニア」などと説明されることがあります。

しかし、米国ビザを検討するうえでは、役職名だけでは十分ではありません。

たとえば「マネージャー」であっても、

  • 現地で誰を管理するのか
  • どのような意思決定を行うのか
  • 実務を自ら行うのか
  • 日本本社を代表して監督・調整するのか
  • 米国法人の日常業務に組み込まれるのか

によって、活動の性質は大きく変わります。

今回のIMS案件でも、単に「買収後のサポート」とするのではなく、予算、報告体制、ブランド統合、改装、設備投資、会計・監査など、米国で行う予定の業務を具体的に整理してサポートレターを作成しました。

よくある質問

Q1.日本企業が米国企業を買収したら、日本人社員はESTAで出張できますか?

買収したという事実だけでは判断できません。会議、商談、契約交渉など一定の商用活動であればESTAによるVWP渡航の対象となり得ますが、実際に米国で行う活動が就労に該当する場合は別のビザカテゴリーを検討する必要があります。

Q2.90日以内ならESTAで大丈夫ですか?

いいえ。「90日以内」という期間だけで判断することはできません。VWPの滞在期間は原則90日以内ですが、米国で予定している活動そのものがVWPで認められる範囲に入る必要があります。

Q3.給与が日本企業から支給されていればB-1で働けますか?

日本から給与が支給されるという事実だけでB-1が認められるわけではありません。米国で行う活動内容、雇用関係、給与の支払元、本人の専門性などを総合的に確認する必要があります。

Q4.買収した米国企業へ長期間駐在させる場合は?

企業間の資本・支配関係、本人の海外勤務歴や職務内容などによっては、L-1やE-2などが選択肢になる場合があります。一時的な出張と長期的な駐在では、検討すべきビザが異なる可能性があります。

Q5.買収直後の数か月だけ統合作業を担当させたい場合は?

今回IMSが取り扱った案件では、日本本社の管理職が約3か月間、買収後の統合作業を担当する計画について、B-1 in lieu of H-1Bとして申請を組み立てました。ただし、同じ「3か月のPMI」であっても、すべての案件が同じビザに該当するわけではありません。

米国M&A後の社員派遣・Bビザ申請も行政書士法人IMSへ

日本企業による米国企業の買収や米国事業への投資では、M&Aそのものだけでなく、買収後に日本人社員をどのような在留資格で米国へ派遣するかも重要な実務課題です。

特に、

  • 米国企業を買収し、日本から社員を派遣したい
  • 買収後のPMIを日本本社の社員に担当させたい
  • ESTAで対応できる業務なのか分からない
  • B-1とB-1 in lieu of H-1Bの違いを確認したい
  • L-1とBビザのどちらを検討すべきか分からない
  • 米国側から給与を受けない短期派遣を予定している
  • 海外人事部門として複数の社員派遣を検討している

といった場合には、渡航直前ではなく、M&A後の派遣計画を作成する段階でビザカテゴリーを確認することをおすすめします。

米国企業買収後の日本人社員派遣についてご相談ください

行政書士法人IMSでは、米国で予定する具体的な業務、派遣期間、給与の支払元、企業間関係、申請者の職歴・専門性などを確認し、Bビザをはじめとする米国ビザ申請をサポートしています。

行政書士法人IMSへ問い合わせる

米国政府公式情報


※本記事は2026年9月時点の米国政府公表情報および行政書士法人IMSが実際に取り扱った申請案件をもとに、一般的な情報として作成しています。米国企業の買収やM&A後の社員派遣で必要となるビザは、企業間関係、申請者の職歴・資格、米国での活動内容、給与の支払元、派遣期間その他の事情によって異なります。本記事で紹介した事例と類似していることのみをもって、B-1 in lieu of H-1Bその他のビザへの該当性または発給を保証するものではありません。

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