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シビル・ユニオンと在留資格「家族滞在」の問題

シビル・ユニオンとは?

皆さまは、シビル・ユニオン(civil union)についてご存じでしょうか。国や地域によっては、シビル・パートナーシップや登録パートナーシップなど様々な呼び方があるようですが、元々は同性婚が認められない状況において、同性パートナーにも結婚で認められる権利の一部を認めるための制度として始まったものです。日本でも自治体レベルでは拡がりつつある制度ですが、既に同性婚が認められるようになった国においては、フランスのPACS(民事連帯協約)を始め、この制度の活用が更に進化し、異性間においても結婚ではなく、パートナーシップ関係を結ぶカップルが増えているようです。

 

シビル・ユニオンのパートナーは「家族滞在」の対象か?

さて、同性婚やシビル・ユニオンのパートナーと暮らしている外国人のカップルが日本にやってくる場合、一方が就労や留学などの在留資格を取得し、パートナーが「家族滞在」の在留資格を得て日本で暮らすことは可能なのでしょうか。残念ながら、答えはNOです。

シビル・ユニオンは、結婚に似た「法的に承認されたパートナーシップ関係」を指す言葉ではありますが、法律上の婚姻関係と同義ではありません。

在留資格「家族滞在」について、入管法や入国・在留審査要領ではどのように規定しているのか確認しておきましょう。

 

在留資格「家族滞在」とは

入管法別表第一では、在留資格「家族滞在」の方が日本で行うことができる活動として、以下のように規定しています。

一の表、二の表又は三の表の上欄の在留資格(外交、公用、特定技能(二の表の特定技能の項の下欄第一号に係るものに限る。)、技能実習及び短期滞在を除く。)をもつて在留する者又はこの表の留学の在留資格をもつて在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動

初めの部分が何を指しているのか分かり難いので、具体的に確認しておきましょう。配偶者や子供が在留資格「家族滞在」の対象(被扶養者)となり得る、本体(扶養者)の在留資格は、別第一(活動系)の在留資格から以下を除いたもの、ということになります。

・外交
・公用
・特定技能1号
・技能実習
・短期滞在
・研修
・家族滞在
・特定活動

ここで、「外交」「公用」が対象外になっているのが意外に思われますが、実は「外交」「公用」の在留資格を持って滞在する方の扶養を受ける配偶者または子としての活動は、「同一の世帯に属する家族の構成員としての活動」に含まれているため、これらの配偶者や子供の在留資格は「家族滞在」ではなく、扶養者と同じ「外交」または「公用」になります。

 

「配偶者」とパートナーの違い

扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動」という部分は、この在留資格に該当するかどうかを判断する上で重要なポイントになりますので、ここで使われている用語を細かく見みましょう。(「入国・在留審査要領」参照)

「扶養を受ける」
扶養者が扶養の意思を有し、かつ、扶養することが可能な資金的裏付けを有すると認められること。配偶者は、原則として同居を前提として扶養者に経済的に依存していること。経済的に独立している配偶者または子としての活動は含まない。

「配偶者」
現に婚姻が法律上有効に存続中の者をいう。離別した者、死別した者及び内縁の者は含まれない。また、外国で有効に成立した同性婚による者も含まれない。

「日常的な活動」
教育機関において教育を受ける活動等も含まれるが、収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動は含まれない。

特に、「配偶者」のところですが、法律上の「婚姻」が必要とされていますので、結婚に似たものとは言え、シビル・ユニオンのようなパートナーシップ関係は対象外となります。また、たとえ本国では同性婚が認められていても、日本では現状、同性婚が認められていないため、日本においては法律上の配偶者からは除外されていると解されます。なお、当然のことですが、「婚約者」の状態では、まだ婚姻が法律上有効になっていませんので、対象外です。

 

日本でもパートナーと暮らすには

では、日本では配偶者として認められないパートナーと、日本でも一緒に暮らしたい場合はどうしたら良いのでしょうか。その場合は、パートナーの方自身が別の中長期の在留資格を取得することが出来れば、それが最も良い方法と考えられます。日本で就職先や仕事を見つけ「技術・人文知識・国際業務」等、何らかの就労による在留資格の申請を行うか、「留学」や「文化活動」などの在留資格で受入れてもらえる所属機関を探す方法です。

 

軽めの関係が好まれる動き?

冒頭で、異性間においても、シビル・ユニオンなどのパートナーシップ関係を結ぶ選択をするカップルが増えているという話をしましたが、そこには日本とは異なる事情がありました。キリスト教、特にカトリック教徒の国では結婚は宗教的にも重い契約関係になるため、異性カップルの間でも宗教色のない(軽めの)契約関係として利用が広がっているようです。

今回、シビル・ユニオンと在留資格「家族滞在」の問題を調べていたら、国による結婚の意味の違いや、時代の変化に伴う制度の変化など、これまで気づかなかった背景に気づくことができました。

(S.I)

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